薄明光線

エッセイテイストな読み物。週一くらいの頻度で更新します。僕の話、時々僕ではない誰かの話。ささやかな楽しみにしてもらえたら幸いです。

2019-01-01から1年間の記事一覧

夜のコーヒーショップ

仕事を終えて、明日は休みで暇を持て余していたので、行きつけのコーヒーショップに立ち寄ることにした。いつもマスターに任せているが、おそらく今日もエチオピアを入れてくれるだろう。僕は「お任せします。」と一言、エチオピアを注文した。 昨日、職場の…

書く理由

YouTubeでおもしろい話をしていた。 産業革命で、全てのものが一点ものだった時代から大量生産の時代へ変わり、貴族と庶民の差が薄まって貴族制が崩壊した。 今はネット社会でAmazonやUber Eatsが特定の地域であれば1時間で物を運ぶようになり小売店というシ…

ひかりのまち

前を歩く派手な若い女が吐き出したタバコの煙が目に染みて涙が出そうになった。 俺はなんでこんな汚い街に優しくされて生きているんだろう。 こんな夜に一人で過ごしてはならないと分かっているのに、あえて一人で過ごしてしまうのは何故なんだろう。 心身が…

どこもかしこもバチェラーよ。

※筆者は詳しくないのだがバチェラーのネタバレが含まれるかもしれないのでご注意を。 職場でもTwitterでも、身近な女性達がバチェラーに夢中だ。バチェラーについて知らない人はWikipediaで検索か、Amazonプライムを契約してみて欲しい。 職場のある女の子が…

10歳の僕と初代プレステ

※noteの方のお題として書いたものをこちらへも転載しています。 初代プレステを手にしたのは、ノストラダムスの大予言なんて言葉が懐かしい1999年、僕が10歳になって間もない春の事だった。 妹が小学校への入学を控える春で、祖父母が妹の学習机を選ぶために…

曇りなき眼で世界を見たい。

人より良い車を持っているだとか、良い女を何人抱いただとか、テメェの住処を地べたとの距離で競い合うこの経済主義の気持ちの悪い物差しに今日も嫌気を感じている。 俺は今夜も、最低限の仕事と、腹を満たすだけの食事をし、ただただ文字を書き連ねている。…

子猫に捧げる愛の詩

数年前、まだ定職にも就かずフラフラしていた頃の事、少しばかり割りの良い仕事に当たって金が余ったもんだから、酒場に入って女の肌を眺めてた。 女の気を引こうと、客の男たちが下手クソな歌を次々歌うもんだから、やかましくて、女達の肌の衰えを誤魔化せ…

無力

以前にも書いた事があると思うのだが、僕は秋口の夜が少し肌寒く感じるこの時期になると舞子の浜辺にサンセットを観に行く。 狙っている気候に近い日が運良く休日と重なったので、陽の光がややオレンジがかり始めた頃に電車へ乗り込んだ。 当時の事を思い出…

タバコの残り香

炙られた葉とメンソールの香りが、鼻を通って肺まで渡り、ジンの酔いで程よく温まった体に馴染んでいく。 僕は普段タバコを吸わない。酒を心地良く飲めた日にだけ嗜む程度だ。仲間内と飲んでいたテラスの席は禁煙席だったようで、店員に灰皿をお願いすると奥…

何かで一番になろうと、僕は誰の一番でもない

3年間想いを寄せていた人と二度と会えない関係になった。ビル街でさえ甘ったるい桜の香りが充満する、4月の頭の事だった。 それからというもの、仕事の成績が良くとも、仲間内で話題の中心になろうと、自身の事で多くの賞賛を得ようと心が満たされる事なく、…

※ブログをnoteにも投稿します!

https://note.mu/myojyo_1 よろしくお願いします。

夏の終わり

小学生だったあの頃の夏に戻りたい。 クマゼミがやかましく、夏日の眩しい朝、仲間達と眠い眠いと言いながら町内会のラジオ体操に出かけたい。 プールの授業の後、そのままクラスメイトと集まって市民プールへ出かけたい。 お盆は叔父に連れられて、田舎で親…

時間は何かを解決し得るのか。

3年前からの一人暮らしのきっかけは失恋だった。 心にかなりの深傷を負って、辛さに何かしらの理由を持たせてやる必要があった。 惰性で続けていた職場には退職宣言をし、失恋した一週間後には物件屋で話を聞いていた。 引っ越しの資金はギターなどの持ち物…

此処ではない何処かへ

今の家に引っ越してから3年が経った。 テレビすら無かった部屋には、無名メーカーではあるが大きなテレビに加えて、最新のゲーム機が2台置かれ、空間から放たれる空気感は生活感の有る無しを通り越して、"定着"していた。 ここでの生活をしっかり築き、多く…

平成では大人になれなかった

昭和63年12月、僕はこの世に生を受けた。 この約1ヶ月後には年号が変わり平成の世となる。つまり、僕が物心ついた頃には平成であり、僕の持つ全ての記憶が平成のものという事になる。 僕の数え歳は平成とイコールだ。平成の年数が語る記憶はその歳の僕の記憶…

スナックに行くおっさんの気持ちなんて一生わからないと思っていた。

誂えられた食事のように、"さあ召し上がれ"と裸になった女性を見ても、何かを思う事ができなくなった。 むしろ、気分でない時に出された焼き魚の感覚に近い。この後起きる一連の流れを予測立てすると、骨を取らなければ食べる事ができない。めんどくさいとい…

意のまま気のまま

口の中にチョコレートを含み、そこにウイスキーを一口流し込む。ウイスキーで口の中のチョコレートを溶かしながら、読みかけの本に手を伸ばした。 こういう食べた方が正しいのかはわからないが、昔からチョコレートとウイスキーという組み合わせが好きだ。 …

失望

死にたいほどへは気持ちが届かず、ただ、"僕の人生が少しばかり早く通り過ぎてくれればいいな"、くらいに失望を感じながら日々を生きている。 他人と会話を重ねれば重ねるほど、大衆の考えと自分の考えとの差にギャップを感じて息苦しくなる。 人が他人の噂…

死のうと思っていた

"死のうと思っていた。" 太宰治の「葉」という作品の冒頭である。おそらく高校生の頃だかにこれを読み、この一節に取り憑かれた。ふとした瞬間にこのフレーズが頭に浮かび、私は確かに、自身の胸の内に僅かながらに死への憧れがある事を自覚した。 いつから…

痛みに鈍感になる苦痛

例えばの話、同じ社内で働く笑顔が可愛いアイドル的存在の女子社員が、ある日突然社内に寿退社宣言をぶち込み、社内に激震が走ったとする。そんな光景で例えるならば僕の立場は、妻子がある身でありながら毎朝その子が熱いお茶を運んでくるのを楽しみにして…

やさしくなりたい

中学時代の同級生が警察に御用になった。 ちょっと誰かと小競り合いになったとかではなく、週刊誌に載ってしまう程度のスケールのものだ。この内容については今回は割愛する。 あいつがあいつの彼女に手を出しただの、あそこの社長が横領を働いただの、私の…

湯に溶かされた幸福論

連勤を控えた休日、少し早めに目覚めたせいか昼食後に眠気がきてしまい、特に予定もないためそのまま眠気に付き合った。 目覚めた時には窓から部屋に溢れる光は橙色に変わっていて、このまま何かあるわけでもない休日として1日を終える事もできたが、せっか…

島田紳助はあの頃に戻れるなら10億でも出すと言っていた。

年末年始という事もあり、この頃は地元の街に戻る事が多かった。 仕事終わりに人と会う約束をし、職場からのアクセスの良さから、普段は阪急を利用しているところを今回はJRの駅で待ち合わせたのだが、某大学の新キャンパスとの提携もあり駅が大きく改装され…

No title

メッセージSNSの"最近更新されたプロフィール"の中に、もう15年は口を聞いていないであろう友人のトップ画の更新があげられていた。 開いてみると、友人の子供と思われる男の子ふたりが、公園のベンチらしいところに並んで座っているありがちな写真だったの…