薄明光線

エッセイテイストな読み物。週一くらいの頻度で更新します。僕の話、時々僕ではない誰かの話。ささやかな楽しみにしてもらえたら幸いです。

2018-09-01から1ヶ月間の記事一覧

秋の夜長、ジントニック 550円

まだ自分が専門学校生の時、兵庫の加古川から大阪の学校へ通うひとつ歳上の先輩と付き合っていた。あまえたで、どちらかと言えば妹気質な女性。この世代ではありがちだが、酷く心を落としていて、正式に医者に解離性同一性障害と診断された本物の二重人格だ…

【1】ライク・ア・ローリングストーン

23歳の夏、僕は父親に実家を追い出された。 持てるだけの私物をリュックに入れて家を出た。 その頃、僕は気を病んでしまい、バイトの面接に受かっても1ヶ月も続かずに転職を繰り返し、実家へ満足に生活費を入れる事もできなくなっていた。 その頃の父親との…

季節外れの春の話

小学生の頃、転勤族の女の子を好きになった事があった。 彼女は小3の春に東京から僕の家の徒歩10秒のところに引っ越してきて、小4が終わる春にまた東京に戻っていった。 天真爛漫で人見知りもしない子で、物怖じもしない挙動からか、同性から敵を作りやすい…

優しい季節

夏とも秋とも取れぬ、心地良い程度に冷えた夜風が吹くこの時期が大好きだ。 仕事が終わって家に戻ると、常用していないクセにこの時期のためだけに買ったタバコを持ってベランダに出て一服するのが季節限定の日課となる。 僕の家は大阪市の北側にあり、ベラ…

雨に唄えば

音楽専門学校でギターを専攻していた。 その頃の名残からか、30歳近くなった今でも当時好きだったアメリカやイギリスのブルースロックやサザンロックを好んで聴く。 こういった話題は歳の近い同僚や友人達にほとんど理解されない。 同年代から理解され難い趣…

隣の席の女の子

「ドラクエが好きなんですか?」少し不安げに見える華奢な女の子はそう言った。初対面の女子に唐突に話しかけられて、僕は中1の男子らしく硬直してしまった。なんでドラクエ好きがわかったのか?これは筆箱にバトルエンピツが入っていたので後々合点がいっ…

後部座席の優しい宇宙

確か6歳だか7歳頃の日曜日、母と仕事が休みの父と私の3人、車で大型ショッピングモールへ買い物に出かけ、ファミレスではステーキを頬張り、はしゃぎ疲れて帰る家路。車の後部座席でひとり横になり、エンジンの振動に揺られながら、寝つくか寝つかないかの間…

あと3ヶ月もしたら30歳だ

あと3ヶ月もしたら30歳になる。 よく聞かれるのは、“30代になりたくないか?”だ。答えとしては、“なりたくは無いが20代に未練があるわけでもない“といったところだ。音楽の専門学校を卒業した後は、事業の失敗、親に手持ち僅か3円で実家を追い出され…