薄明光線

エッセイテイストな読み物。週一くらいの頻度で更新します。僕の話、時々僕ではない誰かの話。ささやかな楽しみにしてもらえたら幸いです。

優しい季節

夏とも秋とも取れぬ、心地良い程度に冷えた夜風が吹くこの時期が大好きだ。

仕事が終わって家に戻ると、常用していないクセにこの時期のためだけに買ったタバコを持ってベランダに出て一服するのが季節限定の日課となる。

僕の家は大阪市の北側にあり、ベランダも北側にある。僕の生まれ育った北摂が見渡せて結構気に入っている。

いつも左側、つまりは西側をじっと見てしまう。専門学生時代に過ごした江坂や、今の業界で初めて仕事をした千里がある。

僕を大人にしてくれた街だ。この家を離れる事がある時は、誰かの彼氏だか夫だか父になり、また違う自分になっているかもしれない。そんな事を考えると少しばかりこれからの未来に不安を感じてしまうが、この箱のタバコが切れるまでは秋の予感を感じながら、そんな事は考えない事にして少し心をさぼらせてやろう。