薄明光線

エッセイテイストな読み物。週一くらいの頻度で更新します。僕の話、時々僕ではない誰かの話。ささやかな楽しみにしてもらえたら幸いです。

後部座席の優しい宇宙

確か6歳だか7歳頃の日曜日、母と仕事が休みの父と私の3人、車で大型ショッピングモールへ買い物に出かけ、ファミレスではステーキを頬張り、はしゃぎ疲れて帰る家路。
車の後部座席でひとり横になり、エンジンの振動に揺られながら、寝つくか寝つかないかの間の中で聴く、カーステレオから流れるスピッツの「ロビンソン」が好きだった。

"誰も触われない 二人だけの国 君の手を離さぬように
大きな力で 空に浮かべたら ルララ 宇宙の風に乗る"

歌詞とシンクロして心身が浮遊感に包まれる。
父が運転する車に安心し、優しい歌声とエンジンの規則的な振動に揺られて眠気に誘われまどろむ感覚を思い出すと、確かにあの時、私は父と母に愛されていたのだと感じられる。
父と母の愛情に包まれているイメージは宇宙の風に乗った自分であり、私の中で宇宙の風に乗る感覚とは、今も父の車の後部座席だ。